QC-North
量子計算研究会 北海道 ENGLISH
第11回 QC-North
日時: 2001年4月27日(金) 15:00 〜 18:00
場所: 電子科学研究所 講堂
講演2件
講師: 森越 文明 様 (NTT物性科学基礎研究所)
題目: Deterministic Entanglement Concentration
要旨: 量子テレポーテーション等の量子通信においては、送信者(Alice)と受信者(Bob)の間に、Bell(EPR)ペアと呼ばれる量子エンタングルド状態が必要になります。本講演では、AliceとBobの間に不完全なエンタングルド・ペアが存在する場合に、AliceとBobのそれぞれの系への局所的な操作と、2人の間の古典通信のみによって、そこからBellペアを作り出す方法について議論します。複数個の不完全なエンタングルド・ペアから、できるだけ多くのBellペアを確率論的にではなく、決定論的に取り出すためには、全てのペアを
同時に操作する必要はなく、一度に2つのペアを操作すれば十分なことを示します。任意に選んだ2つのペアを次々と操作して、トーナメント式にBellペアを作り出していくという方法によって、最大数のBellペアを必ず得ることができます。さらに、この議論に基づいて、エンタングルド状態を決定論的な方法で操作する際に有効なエンタングルメント・メジャーを導き出します。
講師: 武藤 俊一 様 (北海道大学工学研究科量子物理工学専攻)
題目: 半導体量子ドットの電子スピンを用いた量子コンピューティングの可能性
要旨: 情報処理の新しいパラダイムとして、量子情報処理に注目が集まっている。量子状態を用いて、情報処理をおこなうもので、量子暗号通信、量子テレポーテーション、量子
コンピューティングなど様々の様相を持つ。これらのうち特に、量子コンピューティングは、因数分解やデータ検索が従来のコンピュータ(古典チューリングマシン)より桁違いに高速に行える魅力があるが、依然として、計算アルゴリズムの面でも、具体的なハードウェアの面でも飛躍が期待されていると考える。本講演では、我々(大学院生の笹倉弘理君と私)が最近提案している半導体量子ドットの電子スピンのトンネルと、そのクーロンブロケイドを用いたハードウェアの可能性について議論を行う。電子スピンを用いた量子コンピューティングの提案は、LossとDiVincenzoのパイオニア的仕事を引き継いで、殆どがスピン間の交換相互作用を用いるものであるが、我々のものは交換相互作用を用いないという点で特徴的である。時間が許せば、最近の半導体での電子スピンのスピン緩和の実験結果とデコヒーレンスとの関係についても議論したい。
第12回 QC-North
日時: 2001年6月29日(金) 14:30 〜 17:00
場所: 北海道大学 電子科学研究所講堂
講演2件
講師: 清水 薫 様 (NTT物性科学基礎研究所)
題目: メッセ−ジ認証通信のための量子マジックプロトコル
要旨: 量子暗号というと鍵配送(秘匿通信)の話題に関心が集中していますが、今回は量子暗号の基本的なアイディアの一つである共役符号化の概念を認証通信に応用する 試みについてお話ししたいと思います。具体的にはアリスとボブの間での二者間メッセ−ジ認証、すなわちメッセ−ジの書き手・送り手が本当にアリス又はボブなのかを互いに確 信するためのプロトコルを量子効果を使って実現する方法を取り上げます。さらに時間の余裕があれば量子効果を使うことによって古典的な手法では実現できない非常に有用な 機能を付加できることを示したいと思います。またこのような光子通信装置は線形光学の範囲内で充分実現可能であることにもふれる予定です。
参考文献: 清水、井元、日本物理学会講演予稿集:1998秋第2分冊P.341, 1999春第2分冊P.280、1999秋第2分冊P.112
講師: 花村 榮一 様(千歳科学技術大学)
題目: 遷移金属酸化物の非線形光学と光エレクトロニクス
要旨: 遷移金属酸化物、特にぺロブスカイト型の結晶は酸素と金属間の電子軌道の重なりが大きく、強い振動子強度を持つ。また、他の金属の添加により超伝導を示すものがある。これらの特性を活かして光エレクトロニクスデバイスを設計し、また特異な非線形光学応答の観測と理論解析を紹介する。
第13回 QC-North
日時: 2001年10月29日(月) 16:00 〜 17:30
場所: 北海道大学 電子科学研究所講堂講師: 内山 智香子 様 (山梨大学工学部)
題目: 量子計算とデコヒーレンス
要旨: 量子計算を遂行する際には、デコヒーレンスが障害となる。本講演では、デコヒーレンスによって起こるエラーを克服する方法のひとつであるパルス制御について述べる。実際に、グローバーのアルゴリズムに適用した結果についても述べる予定である。
第14回 QC-North
日時: 2002年5月10日(金) 16:30 〜 18:00
場所: 北海道大学 電子科学研究所講堂講師: 鳥本 司 様(北海道大学 触媒化学研究センター)
題目: 光エッチングを利用した半導体ナノ粒子の単分散化と光電気化学特性制御
要旨: 粒径が10 nm 以下の半導体ナノ粒子は、バルク半導体結晶から分子への遷 移領域に位置し、粒径に大きく依存して特性が変化することから興味深い研究対 象になっている。半導体ナノ粒子の合成法はこれまでに数多く報告されているが、 得られたナノ粒子の粒径分布はいずれも比較的広いものであり、半導体ナノ粒子 の特性と粒径との関係を詳細に研究するためには不適切であった。演者らのグルー プでは、半導体ナノ粒子の新規な単分散化法として、サイズ選択光エッチング法 を開発した。これは,半導体ナノ粒子が量子サイズ効果により粒径減少に伴って エネルギーギャップが増大することと、溶存酸素存在下で光照射すると金属カル コゲナイド半導体が光酸化溶解することを利用している。本講演では、サイズ選 択光エッチング法の有用性と単分散化された半導体ナノ粒子の光電気化学特性に ついて述べる。参考文献:
(1) T. Torimoto, H. Nishiyama, T. Sakata, H. Mori, and H. Yoneyama, J. Electrochem. Soc., 145, 1964-1968 (1998).
(2) M. Miyake, T. Torimoto, T. Sakata, H. Mori, and H. Yoneyama, Langmuir, 15, 1503-1507 (1999).
(3) T. Torimoto, H. Kontani, Y. Shibutani, S. Kuwabata, T. Sakata, H. Mori, and H. Yoneyama, J. Phys. Chem. B, 105, 6838-6845 (2001).
第15回 QC-North
日時: 2002年6月13日(木) 15:00 〜 17:00
場所: 北海道大学 電子科学研究所講堂
講演1
講師: 佐々木雅英 様、武岡正裕 様(通信総合研究所)
題目: 量子通信路符号化;理論と実験
要旨: ある通信路を通して送れる情報量は、使える通信資源の量と雑音特性 によって決まる。従来の情報理論では、通信資源の量を倍にしたとき、 送れる情報量は最大で2倍にまで増やすことができる。これに対して 量子情報理論では、一般に2倍以上の情報量を伝送することが理論的 に可能である。このいわゆる通信路容量の超加法性について、基礎 理論と最近の実験結果について紹介する。参考文献:
Sasaki, et al. Phys. Rev. A 58, 146-158 (1998).
Mizuno, et al. Phys. Rev. A 65, 012315/1-10 (2002).講演2
講師: 三森康義 様、長谷川敦司 様、佐々木雅英 様(通信総合研究所)
題目: 半導体量子ドットにおけるコヒーレンスとラビ振動
要旨: 固体で量子計算、量子力学的なデバイスを実現するためには非常に長い コヒーレンスを保つ量子状態の探索とラビ振動を観測することが不可欠で ある。我々は半導体量子ドット中の励起子に着目し四光波混合法により 量子ドットの位相緩和時間と光学応答を時間領域から研究を行った。 量子ドットの位相緩和時間は約2nsでありラビ振動についても観測に成功 した。
参考文献
1.三森康義他、第6回量子情報技術研究会資料QIT2002-17
2.I. Abram, Phys. Rev. B 40 (1989) 5460.
3.H. Kamada, H. Gotoh, J. Temmyo, T. Takagahara, and H. Ando, Phys. Rev. Lett. 87 246401-1 (2001).
4. T. H. Stievater, Xiaoqin Li, D. G. Steel, D. Gammon, D. S. Katzer, D. Park, C. Piermarocchi, and L. J. Sham, Phys. Rev. Lett. 87, 133603-1 (2001).
5.D. Birkedal, K. Leosson, and J. M. Hvam, Phys. Rev. Lett. 87, 227401-1 (2001).
6.D.Gammon, Science 273 (1996) 87.
第16回 QC-North
日時: 2002年7月2日(火)15:30-17:00
場所: 北海道大学 電子科学研究所 2階講堂講師: Dr. Andrew White (The University of Queensland ( Australia ) Lecturer, Department of Physics Senior Researcher, Centre for Quantum Computer Technology)
題目: Manipulation, measurement and application of entangled photon states
要旨: 現在 Australia では、3つの大学とほか数個の海外研究機関から 構成される、Centre for Quantum Computer Technology による 量子計算の実現に向けた研究が進められています。 Dr. Andrew White は、現在 Brisbaneにある Photonic QC のDivision (Milburn教授)の量子光学実験研究のリーダーとして 精力的に活動されています。 今回は、彼らが世界でもっとも進んでいる、光子のもつれ合いとその評価 (もつれ合いとはなにか)から、光子を用いた量子計算、量子情報処理 の分野での彼らの最近の研究展開について講演いただく予定です。
第17回 QC-North
日時: 2002年10月2日(水) 13:30 〜 15:00
場所: 北海道大学 電子科学研究所講堂講師: 北川勝浩 様(大阪大学大学院基礎工学研究科)
題目: NMR量子計算は量子計算じゃないのか?(仮題)
要旨: Shorの量子アルゴリズムで15の因数分解に成功したNMR量子計算であるが、これが本当に量子計算と言えるか どうかについては、意見が分かれているようである。 本講演では、リソースの観点からこの問題を論じ、争点を >明らかにしたい。(仮)
第18回 QC-North
日時: 2002年11月22日(金) 15:00 〜 17:30
場所: 北海道大学 電子科学研究所講堂講演1
講師: 森越 文明 様 (NTT物性科学基礎研究所)
題目: Entanglement concentration via deterministic, probabilistic, and faithful transformations.
要旨: エンタングルメントを定量的に理解するためのひとつの方法として、 エンタングルした状態から、局所的操作と古典通信のみを用いて 取り出せるBellペアの数を用いることができる。 その際の操作が決定論的な場合と確率論的な場合では、 Bellペアの数の漸近的な振る舞いが異なることが知られている。 本講演では、古典情報理論で知られている誤り指数という概念を 導入することにより、上記の2つを特別な場合として含むようなより 一般的な枠組みにおいて純粋状態のエンタングルメントを定量化 できることを示す。 さらに、変換の成功確率ではなく、変換の精度の観点からも同様の 定量化について考察する。講演2
講師: Holger F. Hofmann (JST-PRESTO, 北大電子研)
題目: Probabilistic non-linear operations for optical quantum information processing
要旨: Precise photon detection and single photon generation allow the realization of effectively nonlinear optical quantum operations using only linear optical elements. In this presentation, the basic principles of such postselected operations are reviewed and some typical applications are discussed.
第19回 QC-North
日時: 2003年7月24日(木) 15:00 〜 16:30
場所: 北海道大学 電子科学研究所 N308会議室講師: 西村治道 様 (School of Information Technology and Engineering, University of Ottawa) 題目: 生成と識別に必要な最小量子情報量 Minimal Quantum Information for generation and distinction 要旨: ある文字列を生成することと他の文字列と識別することは計算量理論においてよく研究されているタスクである。 多項式時間計算量において生成は識別より困難なタスクであるように思われるが、ある計算量的仮定に関連する未解決問題である。この講演ではコルモゴロフ記述量的考察に基づいて量子生成記述量と量子識別記述量を紹介し、生成と識別に必要な量子情報量を議論する。 Generating a string and distinguishing it from the other strings are well-studied two tasks in complexity theory. In polynomial-time complexity, generation seems to be more difficult than distinction but it is open problem relating to some complexity assumption. In this talk, I introduce a notion of quantum generating complexity and distinguishing complexity in Kolmogorov complexity theoretic terms, and discuss quantum information needed for generation and distinction.
第20回 QC-North
日時: 2003年7月25日(金) 10:30 〜 11:30
場所: 北海道大学 電子科学研究所 講堂講師: Prof. Dr. Oliver Benson (Humboldt-University of Berlin, Germany) Title: Quantum Optics with Quantum Dots and Nanoemitters Abstract: The quantum properties of nanoscopic semiconductor structures have opened the way for the realization of novel quantum light sources. The emission of light from optically active material can be controlled down to the level of single photons. After the first successful demonstrations of incoherent effects such as single photon emission there is now a strong attempt to achieve coherent control of the quantum state in nanostructures. In this talk I will present recent experimental realizations of single photon sources based on InP and CdSe quantum dots. Such light sources can be considered as first building blocks for a future quantum technology such as quantum cryptography or quantum electro-optics. Future experiments, in which a single quantum dot is coupled to a high-finesse optical microsphere resonator in a controlled way will be discussed. Such a system is of fundamental interest as a model system in cavity quantum electrodynamics.