研究内容

光量子計測

量子もつれ光を用いた超高分解能光断層撮影

  • [1]M. Okano, H. H. Lim, R. Okamoto, N. Nishizawa, S. Kurimura & S. Takeuchi, "0.54 μm resolution two-photon interference with dispersion cancellation for quantum optical coherence tomography" Scientific Reports 5, 18042, December (2015).
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      図1.実験概要図

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      図2.実験結果

      光干渉断層撮影技術は、眼科分野において、網膜などさまざまな組織の診断技術として急速に普及しています。しかし、分解能は5μmから10μm 程度に制限されていました。それを解決する方法として、量子もつれ光の2光子量子干渉を利用する量子光干渉断層技術が、2002 年に提案されました。我々は、今回、非常に広い帯域を持つ量子もつれ光源を開発、世界記録となる、0.54μmの分解能に相当する量子干渉縞を実現しました。これは、従来の光断層撮影の原理検証で記録されていた世界記録0.75μmを超える値です。さらに、この超高分解能が、分散媒質(水)などによってほぼ影響を受けないことも実証しました。量子もつれ光源には、物質・材料研究機構の開発した高効率な擬似位相整合素子を用いました。実験結果を図2に示します。図2(a)は、得られた低コヒーレンス干渉縞です。この干渉縞の幅(1.5μm)が、光断層撮影の深さ分解能を与えます。図2(b)は、光路中に1mm 厚の水を挿入した場合の結果です。水の群速度分散の影響で、干渉縞は著しく拡がり、分解能も1.5μm から7.8μmに大きく劣化しています。図2(c)は、量子もつれ光子対の2光子量子干渉の結果です。2光子量子干渉では、光路長が一致するところで同時計数が0になり、その窪みの幅が、分解能を与えます。この実験では、量子光断層撮影の深さ分解能 0.54μm に相当する2光子干渉が得られています。図 2(d)は、光路中に1mm 厚の水を挿入した場合の結果です。低コヒーレンス干渉の場合(図2(b))と大きく異なり、分解能は0.56μmと、水が存在しない場合と比べ殆ど変化していません。現在、この量子光断層撮影の高度化に向けた研究を、JST-CRESTの支援のもと推進しています。本研究は、物質・材料研究機構の栗村直主幹研究員と名古屋大学の西澤典彦教授らとの共同研究です。

      古典理論の限界を超えた感度をもつ光学顕微鏡

    • [1]T. Ono, R. Okamoto & S. Takeuchi, "An entanglement-enhanced microscope" Nat. Commun. 4, 2426 (2013).

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    図1.量子もつれ顕微鏡イメージと実際の顕微鏡観測結果

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    図2.実験装置図

      光学顕微鏡の感度には,標準量子限界と呼ばれる限界が存在します。私たちは,量子力学的にもつれあった光を用いて,世界で初めて,この限界を超えた感度をもつ「量子もつれ顕微鏡」を実現しました。本研究の成果により,生体細胞などをより高い精度で観測することが可能になり,生物学,医学などをはじめ幅広い分野への応用が期待されます。光学顕微鏡のなかでも,微分干渉顕微鏡は,対象物を染色等することなく,そのまま非侵襲で観察・計測する手段として,生物学や医学などで広く用いられています。その顕微鏡の深さ方向分解能 や計測精度は,標準量子限界と呼ばれる,光の古典理論によって決まる信号雑音比で決まっていました。その限界の下では,より高い深さの分解能や計測精度を得るためには,より強い光を当てるしか方法がありません。強い光を照射すると,対象サンプルの損傷などの影響を与えるため,重大な問題となっていました。私たちの研究グループは,量子力学的な相関を持った光子を用いる事で,この標準量子限界を超 えた位相測定が可能であるという原理検証実験に 2007 年に成功,その成果は,サイエンティフィックアメリカン誌に同年の世界ベスト50 研究に選ばれるなど注目されました。そこで,この量子もつれ光子を微分干渉顕微鏡の照明光として利用することで,標準量子限界を突破することを発案しました (図1)。私たちは,光量子コンピュータの研究で培った,良質な量子もつれ光子対源などの技術を用い,「量子もつれ顕微鏡」を世界で初めて実現しました (図2)。その顕微鏡を用い,ガラス基盤の表面に,原子100個程度の厚みで浮き彫りされた「Q」という文字の観察を行った結果,通常の光を用いた観察(標準量子限界)に比べ,1.35 倍の信号雑音比を達成しました。今後,より多数の光子のもつれ状態を実現することで,微分干渉顕微鏡の「感度」を,標準量子限界を大きく超えていくことが可能です。将来的には,生体細胞内部のわずかな物質分布の変化や,蛋白質結晶の結晶化過程の解明など,これまで感度が不足し観察・測定できなかったさまざまな課題への応用が期待されます。また,現在急激に発展している,量子コンピュータに代表される量子情報技術の,より広範な分野への応用のさきがけでもあります。

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