竹内研究室 京都大学大学院工学研究科電子工学専攻

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研究内容

最近の研究内容

光量子情報

光子の量子もつれ状態検証の高効率化に成功

光子の量子もつれ状態を、従来に比べて著しく高い効率で検証する方法の実証に、構築した6つの光子間量子ゲートを含む光量子回路を用いて成功しました。この研究で実現した方法は、光子の量子もつれ状態が大規模化しても高い効率を保てることから、光量子コンピュータや、量子暗号の長距離化、また光量子センシングなどにブレークスルーをもたらすものです。

T. Kiyohara, N. Yamashiro, R. Okamoto, H. Araki, J. -Yi Wu, H. F. Hofmann, and S. Takeuchi,
"Direct and efficient verification of entanglement between two multimode-multiphoton systems,"
Optica 7, 1517-1523 (2020).

実現した光子の量子もつれ状態検証方法のイメージ図

集積可能な「量子もつれ」光源を実現

光子が、さまざまな波長(色)の対となった「量子もつれ」状態を、集積化可能な「半導体チップ」として、同種の素子において世界最大の波長域とモード数で実現することに成功しました。

K. Sugiura, Z. Yin, R. Okamoto, L. Zhang, L. Kang, J. Chen, P. Wu, S. T. Chu, B. E. Little, and S. Takeuchi
"Broadband generation of photon-pairs from a CMOS compatible device,"
Appl. Phys. Lett. 116, 224001 (2020).

集積可能な半導体素子量子もつれ光源のイメージ図

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光量子計測

量子赤外分光

量子力学特有の相関関係(量子もつれ)をもつ可視光子と赤外光子のペアを利用することで、可視波長域の光源、検出器だけを用いて赤外分光測定を行うことができます。従来の赤外分光法では、赤外波長域の光源や検出器が分光装置の測定精度やサイズを決定する大きな要因となりますが、量子赤外分光では小型かつ高性能な可視波長域の光素子のみを使用するため、分光装置の大幅な小型化、高性能化が期待できます。

M. Arahata, Y. Mukai, T. Tashima, R. Okamoto, and S. Takeuchi,
"Wavelength-Tunable Quantum Absorption Spectroscopy in the Broadband Midinfrared Region,"
Phys. Rev. Applied 18, 034015 (2022).

可視-赤外もつれ光子対を利用した量子赤外分光

光量子センシング研究拠点 | UNIT LIST | 京都大学 学際融合教育研究推進センター

量子コヒーレンストモグラフィによる高分解能イメージングに成功

世界最高の深さ方向分解能を有する「量子コヒーレンストモグラフィ(量子OCT)システム」を実現しました。従来の古典的な光を用いる光コヒーレンストモグラフィは、分散の影響でイメージング結果が大きく劣化する(左図)のに対して、量子OCTをもちいると、分散の影響を受けず、高い分解能を保ったままイメージングできる(右図)ことを示しました。現在、この技術のさらなる高分解能化や高速化を目指しており、将来、医療から産業まで広い分野に革新をもたらすことが期待されます。

K. Hayama, B. Cao, R. Okamoto, S. Suezawa, M. Okano, and S. Takeuchi,
"High-depth-resolution imaging of dispersive samples using quantum optical coherence tomography,"
Opt. Lett. 47, 4949-4952 (2022)

左は、従来の光断層撮像法(OCT)で、右は量子OCTで撮像した像。 両方とも、分散媒質が存在するときに撮像しています。

光の強度揺らぎを活用した生体顕微鏡

揺らぎはその使い方や状況に応じて、不要なやっかいものとして扱われることもあれば、有益になる場合もあります。光をプローブとして用いる計測においても、光の強度の揺らぎはノイズとなる場合もありますが、ある種の計測においては有効活用できる可能性があります。私たちは光が自然に持ち合わせている強度の揺らぎを、生体から効率的に情報を抽出するための資源として活用した新しい生体顕微鏡の実現を目指しています。

Y. Eto and M. Nuriya,
"Enhanced two-photon excited fluorescence from green fluorescent proteins by ultrafast fluctuations in intense light pulse,"
Opt. Continuum 1, 2539-2548 (2022).

開発したイメージング装置によるマウス脳スライスの2光子蛍光画像

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ナノフォトニクス

六方晶窒化ホウ素からの光子の射出方向の解明

特殊な偏光を持つレーザービームを用いることで、室温動作可能な単一光子源への応用が期待されている「六方晶窒化ホウ素(hBN)」において、発生した光子がどの方向に射出されているかを明らかにしました。この方法を用いてhBNの向きを最適化し光ファイバと一体化させると、光ファイバから効率良く光子が発生する単一光子源を実現できるようになります。

H. Takashima, H. Maruya, K. Ishihara, T. Tashima, K. Shimazaki, A. W. Schell, T. T. Tran, I. Aharonovich, and S. Takeuchi,
"Determination of the Dipole Orientation of Single Defects in Hexagonal Boron Nitride,"
ACS Photonics, 7, 8, 2056–2063 (2020).

ベクトルビームを用いたhBNから発生した光子の射出方向解明実験のイメージ図

2次元機能性薄膜中の欠陥をカップリングした共振器内蔵ナノファイバ結合光子源の開発

量子インターネットなどの光量子情報通信では、高い安全性を保つため量子暗号やネットワーク型量子情報処理を行う必要があります。その中で情報担体として扱われるのが光子です。この光子を現在の光通信のようにファイバ上で操作するには、ファイバ結合した光子源が必要となります。本研究は、通常の光ファイバを引き伸ばしたナノ光ファイバに更に共振器構造を作製した共振器内蔵ナノ光ファイバ(図(a)-(d))と量子操作や光検出で重要なゼロフォノン線が細いなどの特徴を持つ六方晶窒化ホウ素(hBN)からなる2次元機能性薄膜中の欠陥と結合した光子源の開発の結果です(図(e)と(f))。

T. Tashima, H. Takashima, A. W. Schell, T. T. Tran, I. Aharonovich, and S. Takeuchi,
"Hybrid device of hexagonal boron nitride nanoflakes with defect centres and a nano-fibre Bragg cavity,"
Sci. Rep. 12, 96 (2022).

図(a)-(d)はナノファイバ共振器について、また、図(e)と(f)は共振器上のhBNが持つ欠陥中心からの発光結果。

以前の研究内容

2017年以前はこちら

2008年以前はこちら

こちらから2008年度以前の全データをダウンロードできます→ [PDF](2.67MB)

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